戻る トップページへ戻る

高齢者の健康に欠かせぬ魚食
栄養士ら250人参加し学ぶ
認知症や栄養面で 専門家3人が講演
 
 (社)大日本水産会(中須勇雄会長)は10月27日、「高齢者化社会の食生活」をテーマに、おさかなシンポジウムを東京都・石垣記念ホールで開いた。アルツハイマーなど認知症治療の権威で自治医科大宮医療センターの植木彰教授が、認知症は日本の伝統的な食生活と運動など予防できると解説。食品総合研究所の鈴木平光機能生理研究室長が、DHAだけでなくカテキンを同時に取った時の認知症に及ぼす研究結果、女子栄養大の川端輝江助教授は、高齢者が健康でいるため不可欠な魚の摂取量など最新情報を分かりやすく話した。日本人の平均寿命が男性78歳、女性84歳。さらに出生率低下も加わり、2020年には4人に1人は65歳以上の高齢化社会の食生活のあり方という切実なテーマだけに、栄養士・管理栄養士を中心に水産関係者も多数参加、250人がメモをとるなど真剣な表情で講演に聞き入った。

このシンポジウムは水産庁の補助による指導者育成事業の一環で、水産庁と(社)東京栄養士会が後援した。
 冒頭、中須会長は「魚の摂取量は30歳代と40歳代を境に、大きく変わる。30歳代に比べ40歳代が127%、50歳代が147%、60歳代となるとさらに増えてくる」と水産物の消費現状を説明。「高齢化社会の中で健康な老後を送るために魚が役立っていると、水産業界は自負している。望ましい食生活をさまざまなテーマで講義、有意義なシンポジウムにしてほしい」とあいさつした。
 植木教授は「食生活と認知症予防について」と題し、アルツハイマー病は遺伝子より食生活や運動量が起因し、「特に生活習慣が今、最も注目を浴びている」と解説。水分・野菜・魚を多くとる一方、総カロリーを抑え、甘いものを控える食生活を勧めた。
 アルツハイマー病の特徴である脳内アミロイドは「DHAを多く取ると減る」と最新の海外データも披露し、魚食の有効性を強調した。
 鈴木室長は、DHA含有魚だけでなく、緑茶抽出物に含まれるカテキンを同時摂取した時の認知度に及ぼす研究結果を発表した。それぞれ単独よりも、記憶の想起や言語の流ちょう性で効果があった。現在、食品企業数社の協力で、魚油、緑茶抽出物を含む加工品約20品目を試作し、これで認知症の予防改善効果が期待できるかを検討中という。
 川端助教授は05年版の食事摂取基準で、虚血性や心疾患死亡率の予防効果面から、DHA、EPAのn−3系脂肪酸の下限値が設定されたと説明。高齢者は若い人よりDHA、EPAの摂取率が劣るため「魚を毎日1回以上、1日約100グラム程度を目安に食べることが必要」と具体的な数値目標を挙げた。


■DHAとカテキン同時に−脳機能へより有効作用
(食品総合研究所機能生理研究室 室長 鈴木平光氏)

 魚油に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)は人や動物の脳に比較的多く含まれ、魚油やDHAには記憶学習機能の維持向上効果があることが多くの動物実験で明らかになっている。最近ではDHA単独ではなく、カテキンと同時に摂取した方が脳機能が高まることが明らかにされている。特別養護老人ホームの高齢者30人(平均78歳)に協力してもらい、無臭のDHAを含む魚油の摂取試験をした。1日当たりDHA0.64〜0.8グラムを含む魚油を朝食のみそ汁に添加、6ヶ月間毎日取ってもらい、前後の認知度を改訂長谷川式簡易知能評価スケール法で測定。魚油の長期摂取で軽度、中程度の認知症患者は症状の改善可能性が高く、重度の患者では魚油による改善は難しいことがうかがわれた。
 DHAの単独強化だけでなく、カテキンを高濃度に含む緑茶抽出物を同時に取ったときの認知度に及ぼす影響を検討。試験群とプラセボ群に15人ずつ分かれ、試験群は魚油3グラム(DHA0.7グラム)と緑茶抽出物0.5グラム(カテキン0.4グラム)を摂取してもらった。
 同スケール法による認知度の変動は、3ヵ月後は両者に有意な差はなかったが、6ヶ月後の血には試験群で有意な点数の上昇が認められ、点数が低下する人もいなかった。これは、DHAだけでなくカテキンが有効に作用していることを示している。特に「記憶の想起」「言語の流ちょう性」の項目で高得点が得られた。

<両方を含む試作加工食品で試験>
現在、食品企業数社の協力で魚油3グラム、緑茶抽出物0.5グラムを含む加工食品約20品目を試作、この加工食品を摂取することで認知症の予防改善効果を期待できるかを検討している。来年1月には結果が出る予定。


■食生活改善で認知症予防−魚・野菜多く取り運動を
  (自治医科大学大宮医療センター 教授 植木彰氏)

 米国でも高齢者問題は大変で非薬物療法、特に運動、栄養、脳への刺激の3つが大きなテーマ。日本のやり方が非常に注目を浴びている。アルツハイマー病は脳内に老人班(アミロイド)がたまり、神経原線維が変化し神経細胞が死ぬ。最先端の薬物療法が研究されているが、残念ながら現在治療法はなく、病気を止めることができない。予防するしかない。
 アルツハイマー病は国民総生産が高い国ほど多い。日本はアルツハイマー病患者数が70万人、認知症が150万人いるが、遺伝子起因は5%未満。遺伝子より食生活や運動量など後天的はものが関係し「生活習慣」が今、最も注目を浴びている。自分の意思で直せ、食事で介入が可能なため。
 脳血管性痴ほうとアルツハイマー病は類似。予防には野菜・果物、魚(魚油)を多く取り、過剰に糖・エネルギーを摂取しないこと。サプリメントではなく食品として取らないと効果がないという研究結果がある。

<DHA多く取るとアミロイド減少>
 魚の摂取量が少ないほど、アルツハイマー発症率が高い。アルツハイマー病患者は、血清リン脂質中のn−3系脂肪酸(EPAやDHAなど)の濃度が60〜70%に減少していた。最近、DHAが脳に直接効くというデータが出た。マウス実験でDHAをたくさん食べさせると、アルツハイマーを起こしやすくするアミロイドが減り、老人班の数も減った。
 糖尿病患者はアルツハイマー病になりやすい(約2.7倍)。欧米人に比べ日本人の出るインスリンは半分なので、日本人が欧米人のような食生活をするのは危険。野菜、魚、運動でインスリンを下げることができ、アルツハイマー病もかなり防ぐことができる。


■高齢者ほど多く魚を−DHA体内蓄積の割合 若い人に比べ低い
  (女子栄養大学 助教授 川端輝江氏)
 食事中のn−3系脂肪酸を構成する主な脂肪酸α−リノレン酸、EPA、DHAなどは細胞膜のリン脂質に取り込まれた後、虚血性心疾患や脳梗塞(こうそく)の予防効果、脳機能や網膜機能の維持など健康に重要な役割を果たす。2001年国民栄養調査結果の脂肪エネルギー比率とn−6系脂肪酸摂取量は、成人以降高齢になるに従い摂取量も減少。若年者に比べ高齢者は魚介類の摂取量増加に伴い、n−3系脂肪酸摂取量が高くなるが、平均値としては増加するが、高齢者になるほど個人差が広がる。高齢者の約1割は1日わずか1グラム以下と極端に低い。
 60〜75歳の男性を対象に食習慣を調査。魚の摂取頻度が高くなるほど、赤血球膜の膜リン脂質のEPA、DHAの割合も高くなった。しかし同様の調査で得た若年女性のEPA、DHA割合と比較すると、同じ魚の摂取頻度群でも高齢者のEPA、DHA割合は低い。若年者に比べ高齢者はより多くの魚摂取が必要ではないか。
 最近の研究で植物油に含まれるα−リノレン酸からEPA、特にDHAへの代謝はそれほど期待できるのではないと示され、実験でも関連は認められなかった。EPA、DHAの体内蓄積量を十分にするには、魚類の摂取量を高めることが最も効果的と考えられる。

<50〜69歳男性は1日100グラムの魚を>
 今年4月からの食事摂取基準でn−3系脂肪酸に下限値が設定された。50〜69歳の男性は1日2.9グラム、女性で2.5グラム、70歳以上の男性で2.2グラム、女性で2グラム以上。50〜69歳男性の目標量を満たすには少なくとも毎日1回以上、1日約100グラム程度の魚類摂取量が必要となる。

(2005.11.9 みなと新聞)

戻る トップページへ戻る