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スマ(ヤイトカツオ)養殖に成功―串本町の(株)丸東
和歌山試験場、海洋大学が協力
「高級魚を安定供給」
 
  

「幻の魚」の完全養殖に光が差した―。和歌山県串本町でクロマグロの養殖などを手掛ける(株)丸東が和歌山県の水産試験場と東京海洋大学の協力を得て、ヤイトカツオなどの名前でも知られるスマ(標準和名)の養殖に成功した。サバ科に属するスマはクロマグロの養殖技術などが生かせるうえ、サイズは1-2キロ程度と、マダイのイケスを使った養殖も可能だ。水揚げ量が少ないため、現在は産地市場での消費がほとんどだが、キロ3000円を超えることもあり、「幻の魚」とも呼ばれている。

クロマグロも養殖する丸東は、ヨコワと一緒にスマがイケスに入ることがあり、餌を与えると脂が乗ることや、産地で評価が高いことなどから、養殖生産の可能性を探っていた。そこで、県の水産試験場と共同で、産卵魚の孵(ふ)化、育成に取り組んだ。

水産試験場が産卵魚を初めて孵化させたのは、昨年9月。受精卵5万尾を孵化させ、12月には15-17センチの稚魚約150尾を沖のイケスに移行。海水温が下がる中、耐えられず年明け1月には全滅してしまった。

今年は時期を早め、7月に受精卵3万個、8月に10万個を孵化させ、それぞれ8月に1000尾、9月に1200尾を沖に出した。魚体は6センチ程度だったが、今では15-20センチ、200-300グラム程度まで育ち、約1300尾が生存している。

稚魚のうちは共食いをしてしまうので、餌はイサキやマダイの稚魚。今年の2度目の孵化の際には、餌の量を増減させ、適正量を探る実験なども行った。

受精卵は丸東のイケスの中の親魚から採取されたこともあったが、東京海洋大学先端科学技術研究センターの竹内裕准教授の協力により、水産試験場へ提供された。

竹内准教授はさまざまな魚の採卵、孵化をする中で、スマについても5年ほど前から研究していた。

4キロ程度で産卵するスマは、産卵誘発剤を投与する事で水槽でも産卵できる。受精卵は空輸で水産試験場に届けられた。孵化のノウハウはクロマグロの知見が生かされたという。

稚魚の孵化、育成を担った水産試験場増養殖部の奥山芳生部長は、「県では従来は種苗養殖事業を主体に取り組んできたが、新しい養殖魚の必要性を感じていた。スマの養殖はマダイのイケスでもできるため、マダイ養殖業者による転換も初期投資などがかからずにできる。マダイの魚価の安定にも効果を発揮できるはず」とみる。

丸東の東剛久さんは、「ヤイトカツオは何といってもうまい。ただ、群れないので漁がまとまらず、知名度も低かった。養殖で安定供給ができるようになれば、多くの人においしさを楽しんでもらえるようになる」と期待を込める。

2013/12/17 水産経済新聞

孵化後1週間のスマ
孵化後1週間のスマ
   沖出しの時のサイズ
沖出しの時のサイズ

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