日本養殖トラフグを紹介した映像「福(ふぐ)の国」を公開しました!
2020年11月25日
古来より日本人の舌を魅了してきたフグ。その中でもフグの王様である「トラフグ」の魅力を広く発信するための動画を制作しました。
生産者が愛情をもって大切に育てる「愛福」、料理人がフグを捌く技術を伝承し後世に受け継ぐ「技福」、消費者が美味しく食べて幸せを感じることができる「食福」とトラフグを通して3つの福を堪能いただけます。
上記、動画を皆様のHP上に貼って頂き、日本養殖トラフグの消費拡大にご協力をお願いします。
日本養殖トラフグとは
「日本養殖トラフグ」は、一般社団法人全国海水養魚協会(以下全海水)「トラフグ養殖部会」の指導のもと、日本産種苗を用いて日本国内で育成した養殖トラフグです。
養殖技術の向上により日本国内での安定供給が実現し、全国的に認知が広がった一方で、中国産トラフグを国産トラフグに偽装する事件が発生するようになり、対策として全海水に加盟するトラフグ養殖業者は産地偽装防止と日本養殖トラフグの振興を目指し、トラフグ養殖部会を設立し現在に至っています。
日本養殖トラフグのおいしさの秘密
トラフグは脂肪がほとんどなく、低カロリー・高タンパクといった特徴があります。他の魚と比較した場合、その差は歴然です。
タンパク質に含まれたアミノ酸がフグ特有のうまみを形成しており、刺身にしても鍋にしても上品な味で飽きがきません。特に白子は他の魚と比べても絶品です。
また独特の食感のフグ皮には、コラーゲンがたっぷり含まれており、肌に潤いを与えたり、骨を強くしなやかにしてくれる効果があります。
トラフグはおいしいだけでなく、美容と健康にも最適な食材です。
日本養殖トラフグはなぜ安全で美味しいの?
美しい自然の海で育った養殖トラフグは、生産者によって季節に応じた飼育管理がなされ、年間を通して安定した品質が保たれています。
そのため消費者の皆さんに、一年中おいしいトラフグを食べていただくことが出来るのです。
日本の養殖トラフグは、きれいですばらしい環境で安全・安心に細心の注意を払って大切に育てられています。詳しくは「日本養殖トラフグの養殖」をご覧ください。
生産者が丹精込めて育て上げた養殖トラフグ、皆さんも召し上がってみてはいかがでしょうか。
生産者・前田さんのコメント
『日本養殖トラフグは、稚魚から成魚まで生産履歴がしっかりしており、安心して食べて頂けます。立派に育ったトラフグは、てっさにてっちり、雑炊に唐揚げ、そして口の中でとろける白子、絶品です。色んな料理を堪能して、福を呼んで下さい! 』
トラフグの歴史
日本人とフグの歴史は古く、縄文時代の貝塚からフグの骨が出土していることから、その頃にはすでにフグが食べられていることが分かります。
その後、フグ食が一気に広まったのは江戸時代と言われています。江戸時代、庶民の間でフグは一般的に食べられていました。
幕末に活躍した浮世絵師の巨匠・歌川広重の作品にも寒い季節においしい旬の食材としてフグが描かれています。
フグは“福(ふく)”とも呼ばれ、幸せを招く縁起のよい食べ物として、日本人に珍重されています。
トラフグ養殖の始まり
1960 年に長崎県人工授精による種苗生産に成功し、1964 年に山口県でトラフグの人工種苗の生産が行われるようになりました。それを契機として1975 年ごろからトラフグ養殖が全国的に広がり、日本の養殖漁場に適した系統が継代管理され、トラフグ人工種苗産業が確立。遺伝子鑑定技術を用いた選抜育種や高い付加価値を有する白子をもつオス種苗の生産など最新の技術開発も行われ、優れた日本産種苗によりその特性を強化しています。
種苗生産技術および養殖技術が確立され、それをもとにして各地のトラフグ生産者がその地域環境に合わせ創意工夫を行いながら現代に至るまで養殖を行っています。「日本養殖トラフグ」は、日本独自の食文化という土壌があり、かつ、種苗生産や育種という科学技術と生産者の創意工夫が組み合わさった日本だからこそ発展した産品なのです。
トラフグの乱獲と養殖トラフグ
しかし、昭和に入り1980年代になると好景気を背景にした乱獲などで年々漁獲高が減ってきたトラフグは値段が高騰し、庶民にとっては高嶺の花の存在になっていきました。
そんな中、注目を集めたのが養殖トラフグです。日本におけるトラフグ養殖は、昭和50年代に盛んになり、1980年代には全国各地でトラフグ海面養殖が事業化されました。平成に入るとついに天然と養殖の生産量が逆転しました。2000年代からはかけ流し式陸上養殖の事業化も進み、海面・陸上双方において食品の安全性と供給の安定性が担保された養殖産業が定着していきました。バブル崩壊による高級食材需要減退の影響もあったものの、外食産業の成長という後押しもあり、トラフグ養殖は拡大し、ピークとなる1997年には5,961tを記録しました。生産が増えた養殖トラフグは、値段も安定し、消費者へ一年中安定して供給できるようになったのです。
現在の日本養殖トラフグ
しかしそれ以降は安価な中国産養殖トラフグの台頭等により漸減となり、2010年代末には4,000tを割っていたところに、コロナ禍によって外食産業が壊滅したことでトラフグ生産量も激減しました。3,000tを割り、直近の2022年にはおよそ2,812tとなっています。産地は、日本海側から太平洋側まで幅広く生産されている飼育施設は海面生簀と陸上養殖等に分かれています。生産方法や各産地の水温等成育環境を活かして、年間を通した安定供給を実現している。11月29日を「いいフグの日」に制定し、消費者向け・市場関係者向けの試食展示会、インバウンド向けイベントなどを開催しています。また、各産地では日本養殖トラフグを仕入れた水産業者や流通業者等が北米やアジア諸国へ輸出しています。
日本養殖トラフグはどのように養殖されている?
安全で、おいしい日本養殖トラフグを消費者へ届けるために、生産者がどのようにトラフグを養殖しているのかご紹介します。
稚魚から生け簀に移るまで
トラフグの稚魚
まずトラフグの養殖は、体長5センチほどの稚魚を育てることからはじまります。
小さな頃から徹底した管理のもと育てることで、より安全で安心な日本養殖トラフグを生産することができます。
トラフグの歯切り
その後、サイズを選別されたトラフグは生けすへと移されますが、その際に「歯切り」という作業を行います。この作業は他の養殖魚では行う必要がなく、トラフグならではの特別な作業です。
フグは上下に2枚ずつのするどい歯を持っており、ストレスを感じると、フグ同士で噛み合う性質があります。
そのため、魚の状態を見ながら互いを傷つけないように出荷までの間に4,5回、一匹ずつ丁寧に歯を切ります。
生け簀での世話と生産管理
安全で栄養バランスのとれたエサ作り
トラフグを育てる上で日本養殖トラフグ生産者が最も気を使い、手間暇をかけているのがエサやりです。
エサは毎日同じものを与えるのではなく、トラフグの成長や体調に合わせてサイズや量を調整し、必要があれば栄養剤を加えかくはん機で混ぜ合わせます。
健康で美味しい日本養殖トラフグを育てるには、エサも安全で栄養バランスのとれたものを与える必要があります。
環境に優しいエサやり
エサの配合が終わるといよいよエサやりです。漁港で作ったエサを船に積み込み、生けすへ向かいます。
生産者はエサの食べ方など、トラフグの様子を見ながら、時間をかけてエサを与え、生けすごとに量を調節します。
適切な量を与えることで、エサが漁場に残らずきれいな環境を保つことができるのです。
生け簀の網替え
エサの他にも生産者が気を使うのが生けすの網です。
同じ網をずっと使用していると、貝や藻などが付着し、潮の流れが悪くなりトラフグが健康に育ちません。
このため網替えを頻繁に行うなど、生けす内を常にきれいな状態にしてトラフグにとって快適な環境を保つように注意しています。
生産管理と生産履歴
日本養殖トラフグ生産者の作業は漁場だけではありません。
陸に戻れば、漁場環境の記録や生けすごとのエサの種類、量、魚の状態などの記録をパソコンや日誌に残しています。
それにより、生産者は効率よくトラフグを育てることができます。
また消費地では、消費者がその生産履歴を見ることでき、生産者の顔が見えることで安全で安心な日本養殖トラフグを食べることが出来ます。
生産者・下松さんコメント
『トラフグは胃がなく、すぐにお腹が空くため、毎日の丁寧な餌やりが重要です。
そして、トラフグはちょっとした環境の変化で機嫌を損ねますので、仲間を傷つけないようにする歯切り作業や快適な環境を保つための網替えなど、元気に育てるためには我が子を育てるように手間隙をかけなければいけません』
日本養殖トラフグの出荷
生産者が稚魚からおよそ2年かけて丹精込めて育てたトラフグもいよいよ出荷です。
寄せ網と呼ばれる網を使いトラフグを集め、出荷用に選別しながらトラフグが傷つかないよう慎重に、そして迅速に生けすから取り上げます。
活魚トラック輸送
トラフグの輸送では、消費者まで一番おいしい状態で届けられるよう、活魚トラック輸送が主流になっています。
生けすから取り上げたトラフグを、陸で待機している水槽が備え付けられた専用トラックへと詰め替え、生きたまま消費地へ運びます。
日本養殖トラフグの加工
また、生産地で加工したトラフグを出荷する方法もあります。
フグは他の魚と違って毒を持つ魚なので、加工場ではフグの内蔵を除く「身欠き(みがき)」という加工処理をして、毒を除去します。
消費者の皆さんが安心してトラフグを食べられるよう万全の衛生管理がなされた工場で、フグ専門の資格を持ったプロの調理人が加工を行い、出荷しています。