豊かな漁場と生産者の巧みな技術

アニサキスに効く正露丸

2021年09月27日

高知大研究グループアニサキス幼虫の殺虫効果を初確認
臨床試験パスには困難も

鮮魚を生食提供する際のリスクとして認識されている寄生虫由来のアニサキス症で、100年以上の歴史をもつ市販胃腸薬「正露丸」に、原因となるアニサキス幼虫の殺虫効果があることが初めて確かめられて話題となっている。高知大学理工学部生物科学科の松岡達臣教授らの研究グループが明らかにした。臨床試験をパスするまでの道のりは長いが、世界で初めてのアニサキス特効薬としての期待がかかる。

「正露丸」がアニサキス症による腹痛などの症状緩和に有効との話は、船員らの間では古くから共有されてきた。10年前には「正露丸」の成分によりアニサキス幼虫の運動が止まると報告されていたが、まひしているのか死んでいるのかは判然としていなかった。

松岡教授らの研究グループが7月に発表した論文によると、通常に服用する用量の正露丸を溶かした液に30分間浸して動きを止めたアニサキス幼虫を、(死んだ組織の染色をする効果のある)トリパンブルー溶液で染色すると、24時間後には9割以上が死んだことを示す青色に染まった。また、胃酸環境で消化が始まることも確認された。

松岡教授らは、胃酸環境における酒類などに含まれるアルコールの微生物殺菌効果の研究を行う中で、アニサキス幼虫の殺虫効果も検証。アルコールによる効果は全く認められなかったものの、さまざまな物質を試す中で「正露丸」の溶液でのみ効果が認められたという。松岡教授は「アニサキス幼虫の運動を止める効果があることは知られていたが、まひしただけなのか死んだのかを検証した論文はこれまでなかった。自分も発表するまで半信半疑だった」と話している。

特効薬として正式承認されるには臨床試験にパスすることが必要だが、アニサキス症患者を必要数集めることへのハードルが高いことから、ラッパのマークの「正露丸」でおなじみの大幸薬品㈱(大阪市西区、柴田高社長)広報担当者によると「現時点では臨床試験の予定はない」という。

ただ、「正露丸」の主な成分である「木クレオソート」によるアニサキス幼虫の運動抑制のメカニズムを昨年9月に発表した論文で明らかにするなど「関連する研究は今後も継続する」としている。

2021年9月27日 水産経済新聞

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