タイ養殖の愛南漁協、プラゴミ対応などで「持続可能」実現
2021年12月20日
農林水産業みらい基金、タイ養殖の愛南漁協採択
農林水産業みらい基金は12月20日、今年度の助成対象事業7件を発表した。水産関係では養殖タイの産地である愛媛・JF愛南漁協のプラスチックゴミや加工残渣の有効利用による、地域全体で「真に持続可能な産業」への発展を目指すプロジェクトが採択された。
愛媛・愛南町地域に位置する愛南漁協は年間約800万~900万尾のタイを養殖しており、2019年は全国約20%のシェアをもつ。
基幹産業であるタイ養殖のイケスに欠かせない発泡スチロール製のブイは、年間1,000~2,000個程度を廃棄処分にしていた。「『愛南の真鯛』が拓く地域の未来-我々にとって真のサスティナブルを実現するために」と題したプロジェクトでは、環境問題への対応を含むマダイ特化型の研究室「愛南の真鯛研究室」を立ち上げ、発泡スチロール製ブイなどのプラスチックゴミや、加工工程で出る食品ロス対応などに取り組み、養殖産業が地域のエンジンとなり「真に持続可能な産業」への発展を目指す。
従来はプラスチックゴミは産業廃棄物として処分していたが、機械を導入し燃料チップに加工して入浴施設のボイラーに利用する計画だ。愛南漁協の岡田孝洋販売促進部部長は「みらい基金は『最後のひと押し』と言っているが、私たちにとってボイラーは『最初の一歩』」と、ここから持続可能な養殖業を始めていく決意を示す。
加工品製造においてはどうしても歩留まりが低くなってしまうが、内臓残渣は地域の柑橘類の堆肥にしたり、頭などダシが取れる部分は新たな商品開発に取り組む。
今年度はこのほか農業で4件、林業で2件の採択があり、合計7件、総額7億3,527万円の助成が決定した。申請数は水産業の28件を含む171件で、前年度と比較し水産は5件、全体では24件それぞれ増えた。
農林水産業みらい基金は14年に農林中央金庫が200億円を拠出して設立。「創意工夫にあふれた取り組みで、直面する課題にチャレンジしている地域の農林水産業へのいま一歩の後押し」を目的に掲げて毎年5~9件の助成を行っている。20年までに全部で53件が採択され、このうち水産関係ではこれまでに青森県の日本サーモンファーム㈱や、ヤエスイ合同会社、㈱ケーエスフーズなど13件が採択されてきた。
2021年12月20日 水産経済新聞