豊かな漁場と生産者の巧みな技術

特産柑橘ゆうこう餌にブランド養殖魚

2022年09月16日

『ルポ』長崎の昌陽水産と雄昇水産

港へ水揚げ後すぐに、ゆうこうシマアジを出荷する長野社長
港へ水揚げ後すぐに、ゆうこうシマアジを出荷する長野社長

長崎市にある牧島弁天港で9月8日、船上で締められたばかりの養殖シマアジが、次々と氷を詰めて箱入れされていた。魚はそのまま仲卸のトラックに積み込まれ運ばれていった。

水揚げされたのは、「ゆうこうシマアジ」としてブランド化した養殖シマアジで、市内の昌陽水産(長野陽司社長)が2年前から販売を始めた魚だ。地元特産の柑橘「ゆうこう」を出荷前の餌に混ぜ育て上げ、付加価値を上げた。臭みを抑え魚嫌いの子どもでも食べられると好評だという。

これまで同社ではトラフグを養殖の中心として生産してきたが、病気や赤潮などの自然災害によるへい死が多発。近年は、育てやすい魚種への転換にも取り組んでいる。シマアジは、自動給餌機を使っての定期的な餌やりにも食い気が落ちないため育てやすい。病気にもかかりにくいため、歩留まりが高いという。お客からの魚の評価も上々で、昨年にキロ1,500円だった浜値は2,100円に伸長した。長野社長は「生産者から仲卸へじかに取引することで、収益もアップしている」と手応えを感じている。

同社とともに、長崎市たちばな漁協に所属する雄昇水産(西本崇博社長)も養殖ブランド魚の生産に収益向上の可能性を期待する。「ゆうこうマダイ」は今期3万尾以上の出荷を目標に掲げる。浜値はキロ1,100円と、シマアジに続きブランド魚として認知されてきた。両者はサバも同様に生産し、約1万尾の出荷を計画している。

市内に共同で飲食店開業

開店した鮮魚店を切り盛りする松永店長
開店した鮮魚店を切り盛りする松永店長

他方、「自分たちがつくった鮮度の良い魚を気軽に食べてほしい」との思いから、共同出資して鮮魚店「昌賢(まっけん)鮮魚」を市内に今月オープンした。お互いに養殖場でつくったゆうこうブランドの魚をラウンドや刺身、寿司などで販売する。近隣には集合住宅地が多くあり、年配客を中心に利用が増えているという。

松永浩典店長は「来店客との会話でコミュニケーションがとれるのも楽しい」と話す。長崎たちばな漁協の若手養殖者らは、養殖ブランド魚の生産を通して、地元水産業の活路を切り開いていた。
(2022年9月16日 みなと新聞)

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