豊かな漁場と生産者の巧みな技術

徳島県産サツキマス4,000尾を試験養殖

2023年05月8日

ブリ・ハマチ漁場活用

大きく育ったサツキマス
大きく育ったサツキマス

徳島県が2月初旬から進めてきた上勝町産アマゴ(同県呼称・アメゴ)4,000尾の海上養殖試験が順調に推移し、銀毛したサツキマスは平均重量707グラム、体長35センチまで成育している。中には1.6キロサイズまで育った魚も確認されている。本格出荷を前にした4月27日には、「JF北灘さかな市」で、成育したサツキマスがメディア向けに披露された。

養殖漁場はブリ・ハマチなど鳴門市内の2か所で、養殖にあたったのは北灘町沖の山仁産業㈲(松下有宏社長、JF北灘漁協所属)とウチノ海の藤本水産(藤本憲嗣社長、JF室撫佐漁協所属)の2社。それぞれ208グラムサイズのアマゴ2,000尾ずつを、山仁産業は2月7日、藤本水産は同月10日に池入れした。

大きく育った県産サツキマスは今後、卸売業者などへ県内を中心に県外へも出荷・販売される。4月29日からは数量限定で北灘漁協で鮮魚を販売。また、飲食施設「北灘漁協直送 とれたて食堂」では刺身定食などとして提供されている。

山仁産業の松下社長は「鳴門でも定置網でまれに漁獲される珍しい種類。魚病や成育などが懸念され、日々試行錯誤しながら大切に育ててきた。本県初の養殖サーモンになる。刺身で食べると味が濃厚で、さらりとした良質の食感を味わえる。販売状況をみながら順調に販売できるようなら継続してみたい」と話した。

養殖にあたってきた同社の松下周平専務は、「イケスは10メートル×10メートル×5メートル。スタート当初はドライペレットで、その後、配合飼料(EP)に切り替えた。水分量を調節したり摂餌が進むように工夫。水温が13度Cを超えると目にみえて育ってきた。5月15日には生鮮での最終出荷を終える。一部は冷凍フィレーで通年出荷もしてみたい」と話した。

藤本水産の藤本社長は、「今回初めての取り組みとなったが、順調に販売が進み、上勝町で生産する人たちにとってもメリットが出るような取り組みになるようにしたい」と述べた。

上勝町アメゴ養殖組合の組合員は、餌料に県産柑橘(かんきつ)のユコウ果汁を添加して育てた「ゆこうアメゴ」などを生産・出荷してきているが、金石精一組合長は「既存の生産出荷に加えて、種苗として販売が新たに確立されることを期待したい」と話した。

県は1月に上勝町の養殖場で採卵・育成されたアマゴを海陽町の県有種苗生産施設へ輸送。30%程度から海水馴(じゅん)致をはじめ、鳴門市に再輸送し海面養殖を進めてきた。今回の販売結果などを踏まえて、ブランド名や今後の養殖などについて検討していく。

2023年5月8日 水産経済新聞

おもしろ情報一覧に戻る

ページの先頭に戻る