豊かな漁場と生産者の巧みな技術

第2回ふぐ交流会、和食以外で消費拡大を

2023年10月11日

コンテストには斬新な料理も

和食・中華以外の参加者を次回コンテストで増やす策についても議論した
和食・中華以外の参加者を次回コンテストで増やす策についても議論した

NPO法人ふぐ食応援大使の会の第2回交流会が10月3日、東京・台東区の上野精養軒で開かれた。関係者約98人が出席し、トークセッションでは今期のフグ生産の概況などの情報を共有。8月21日に開催した第1回ふぐ料理コンテストについて、ふぐ食応援大使の会の亀井一洋理事張は「フグ料理人が思いつかないような斬新な料理が多かった」と振り返った。

亀井理事張は斬新な料理について今後は「フグ料理の定番になっていくのでは」と講評。(一社)全国ふぐ連盟の活動について「フグ免許の国家資格化を実現し、『ふぐ食文化』が世界に広がることを期待する」とコメントした。

ふぐ食応援大使の会の会長を務める「ソシエテミクニ」の三國清三オーナーシェフは、「和食は慣れていたが技が使われすぎて、フグの存在感が消えていた」「参加者にフグの扱い方、楽しみ方、特徴を理解してもらうことでレベルが上がる」と総評した。

「リストランテ・アルポルト」の片岡護オーナーシェフは、「現状の和食料理のみでは発展はないので、和食以外の分野で使用されることに意味がある。1回では成果は出なくても、10回、20回と続けることで成熟する」と今後のコンテストの開催に期待を示した。

「Wakiya-笑美茶樓」の脇屋友詞オーナーシェフは、「フグ専門の料理人がこれまでフグを使用していなかった料理人にレクチャーすることで、それぞれの技術が使えるか吟味できる。事前に基礎的な知識を学べる場があるとコンテストも活性化される」と、課題も挙がった。

協同組合下関ふく連盟の畑栄次理事は天然トラフグの状況について、「山口・南風泊の水揚げは減少傾向」とし、働き手確保のため「過酷な労働環境を変え、週末を休みにすることなどで雇用確保につなげている」と話した。

懇親会では全海水トラフグ養殖部会から提供されたトラフグ35尾を材料に、カルパッチョなどが振る舞われた。

同会は全国ふぐ連盟の会員らが2020年3月に設立。フグ食振興のため8月に第1回の「全国ふぐ料理コンテスト」を開催した。

海水温上昇とコスト高に苦悩
養殖トラフグ

全海水副会長の前田若男全国ふぐ連盟副会長は今期の養殖トラフグについて、出荷前の夏までは前年と同量の250万尾と見込まれていたが、長崎・橘湾での赤潮の発生で、200万尾程度にとどまるとの見方を示した。赤潮の発生により採算が合わず、「やめていく生産者も後を絶たない」という。

今年は9月末まで夏日が続いたことで海水温も高く、「餌を与えても蓄えず、成長が悪かった」「(高水温により)斃(へい)死率も高い」と、育ちにくい環境にあるとした。飼料についても、「トラフグに使用するEP飼料が今年はとうとう一袋(20キロ)9,000~1万2,000円になり年々高くなっている」と、厳しい養殖環境にあると嘆いた。

今期は10月から解禁福島産天然物

近年、漁獲量が増加している福島・相馬のトラフグは、今年は1か月遅れの10月から漁を解禁。全国ふぐ連盟福島県の福とらの会の鈴木光二氏によると、「有識者を集めて検討したところ、需要も考慮し、気温の低くなる10月に解禁となった」と説明。

今後の課題について「市内でトラフグを捌ける業者を増やすのにはまだ時間がかかる」と、今年は加工会社の多い下関にトラフグを送り加工する方向性を示した。

2023年10月11日 水産経済新聞

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